2021/05/24
早めの梅雨に入り蒸し暑い季節となってまいりました。
平素であれば当院のウォーターサーバーが大活躍をする所なのでありますが、コロナ感染症の蔓延を受け、安全のためその使用の自粛を迫られる事態となっております。
医療機関としては大変心苦しいことでありますが、感染症が落ち着くまでの間、皆さま個々人での水分管理をお願いしております。
しかしながら、当院では空調設備による院内温度の管理を行っておりますので、気温上昇による不快感を受けられた方がおられました場合は、ご気軽にスタッフへとお声がけいただければ幸いです。
さて、気温が上がることで熱中症などの鎮静化をした方が良い体温の上昇も起こりえる季節ですが、この暑い中でもわざと上昇をさせた方が良い体温も存在します。
それは“筋温”。読んで字のごとく筋肉の温度です。
直射日光などにより比較的上昇しやすい皮膚の温度などに比べると自然には上昇しにくい筋温なのですが、あえてこの温度を上昇させることで怪我の予防につながる場面が存在します。
それは、運動前。よく言われる所の準備体操で筋温を上昇させることで、一時的な『筋力の向上』、『柔軟性の向上』が起こり怪我の予防につながります。
梅雨の季節、例年リハビリをしていると、「たまの晴れの日だからジョギングをしたらヒザを痛めた」という言葉や、「外に出られないから屋内で筋トレを頑張ったら腰を痛めた」という言葉をよく耳にします。
そして多くの場合に準備体操を行っておらず、『梅雨に引きこもってなまけた体』で突然に運動したためにケガをしてしまっているのです。
このなまけた体の目を覚まし、運動をできる状態に調整することが筋温上昇の最大の働きとなります。
では、筋温はどのようにすれば上昇するのでしょうか。
答えはとても軽い運動を繰り返すこと。
同じ筋肉を何度か伸び縮みさせることで、その筋肉に流れる血の流れが良くなり筋肉の温度が上がるのです。
代表例でいうとマエケン体操。
投球前に肩甲骨を何度か回すことで、思い切りボールを投げてもケガをしないように予防をする体操ですね。
しかしこのマエケン体操、肩甲骨の体操なので当然上がる筋温も肩甲骨周囲の筋温だけとなります。
前田選手はプロのスポーツ選手なので、専属のトレーナーが足の運動、体幹の運動、そしてマエケン体操での肩甲骨の運動と個別に設定し、プロの試合に耐えられる状態へと仕上げています。
筋肉は体中にいくつも存在するので、行う運動に合わせて調整する必要があり、本来プロの選手でもなければ運動を考えるのがとても難しいのです。
ですが、日本には古来よりとても優秀な全身の準備体操が存在します。
それはラジオ体操。
体のさまざまな部分を順番に繰り返し動かすことで、多くの筋肉の温度上昇を引き起こし、かなり幅広い運動に対応してくれる非常に優秀な体操です。
深呼吸で肩甲骨やろっ骨周りの筋肉、屈伸で膝の上下の筋肉、小さなジャンプでふくらはぎ周りの筋肉など、本当に多くの筋肉に運動の準備を与えてくれます。
ラジオ体操第一だけでも、第二だけでも、第一・第二両方でも構いません、数分の運動で筋肉の温度を十分に温めてくれます。
ウォーキング、ジョギング、筋力トレーニング前など、しばしの時間をラジオ体操に割くことで、一時的な『筋力の向上』、『柔軟性の向上』が起こり怪我の予防につながります。
少しの時間の準備体操で、長期のケガにつながるリスクを抑制可能な筋温の上昇。
ますます気温の高くなる季節ですが、水分補給に気を付けながら、ラジオ体操で上げてみてください。
理学療法士:弘中 匠